白痴
坂口 安吾 「白痴」 新潮文庫(2003/11/4)
「白痴の女と火炎の中をのがれ、『生きるための、明日の希望がないから』女を捨てていくはりあいもなく、ただ今朝も太陽の光がそそぐだろうかと考える。…」
解説では、坂口安吾はロマンチスト、センチメンタリストなのだと
説明しています。
しかし、この文章を読んでそう思う人というのは、
全ての日本人の中でどれだけいるのでしょうか?
細かい話はおいておくとして、
主に男女関係にスポットをあてた短編7編が
収められています。
戦時中の題材が多いこともあって
非常にすさんでいるというか哀しみにあふれているというか
やるせないものを感じたりするのですが、
どの話も一番最後に主人公の思いが吐露されているので
読んでいる最中に受けた印象がさらに強まるという寸法になっています。
満員電車に揺られながら読むと
余計に荒んだ気持ちになってくるので、
心に余裕のあるときに読むことをお勧めします。